フライホイール
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フライホイール (Flywheel) とは、機械部品の一種。日本語では弾み車、勢車(いずれもよみは「はずみぐるま」)という。構成要素としては重量のある円盤であり、円盤の回転として力のエネルギーを保存する部品である。
エネルギーの貯蔵庫としての目的だけで円盤を超高速回転(真空中で)させ、必要に応じエネルギーを入出する装置(エネルギー保管庫)としても使用される。
フライホイールの性質は、線形電気回路におけるコイルの性質と類似している。この場合、回転数と電流、トルクと電圧、フライホイールの慣性モーメントとコイルのインダクタンス、フライホイールが持つ回転運動エネルギーがコイルが作る磁場エネルギーと等価な概念と言える。
フライホイールの主な応用例
- レコードプレーヤー
- レコードプレーヤーのターンテーブルは、自身の重量によりレコード回転の安定に寄与する。
- 足踏み式ミシン
- 足踏み式ミシンのベルト式駆動機構の輪はフライホイールとして作用し、足踏みの力が乱れてもミシン針の動きを保つように作用する。
- クランク
- 往復運動を回転運動に変換するクランクにおいては、最上端と最下端に死点が存在していて回転力が働かなくなる。フライホイールを使うことによって、死点においても滑らかに回転を続けられるようにする。
- エンジン
- エンジンの部品として使う場合、4サイクルエンジンでは吸入・圧縮・爆発・排気のサイクルに伴い発生する細かな出力変動を抑制する働きを持つ。また上述のクランクの死点の対策の意味もある。重いほうがエンジン回転の滑らかさは増すが吹け上がりは悪くなり、軽くするとエンジンの吹け上がりは改善するが坂道などで失速し易くなる特徴がある。また、軽い方が回転に係る慣性が弱い為、エンジンブレーキの効きが強くなる。一般的には、スポーツ走行を主眼として開発された車のフライホイールの方が軽く作られている。
- 素材は通常の場合鋳鉄が用いられるが、軽量化を図る際にはクロームモリブデン鋼を用いた物を使う事も多い。近年ではアルミニウム合金製のさらに軽量化されたものも登場してきた。
- 無停電電源装置
- 円盤を超高速回転させ電気エネルギーを回転の運動エネルギーとして貯蔵し、瞬間停電時には回転の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、電源を供給するタイプの無停電電源装置がある。内蔵バッテリーを持たないので、バッテリー交換などのメンテナンスが不要となるメリットがある。因みに、アメリカではこのシステムを組み込んだターボトレインの研究が行われている。
- 玩具
- その単純な構造から自走式の車玩具等の動力として利用される。電池を使わない点、ゼンマイを巻かなくてもいい点、動きっぱなしにならない点、壊れにくい点などのメリットがある。最近ではカブトボーグやゾイド(グラビティーゾイド)の動力源として使われている。
- プレス機械
- 機械式のプレス機械において、モーターの回転運動エネルギーを蓄える目的で利用されている。プレス機械のスライドを上下運動させたい時のみクランク軸・コネクティングロッドとクラッチを介して繋がれる。
- 運動エネルギー回収システム(KERS)
- 走行する車両において、走行中のエネルギーを回収して再利用する。フライホイール方式の他、バッテリー方式がある。フライホイール方式は、重量を持つ円盤を駆動系の中に別途設け、減速時の勢いで空転させる事によって運動エネルギーを保存し、再び運動エネルギーとして用いる方法である。
- フライホイール・バッテリー
- フライホイール蓄電装置などとも呼ばれる。電力系統に接続して、電力を一時的に回転運動エネルギーに変換して蓄積することで、電力系統の安定化を図る。