ホットライン
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ホットラインとは、2か国の政府首脳が非常時に直接対話ができるように設置された直通の電話回線のことである。
概要
元々は、キューバ危機の後の1963年8月30日、アメリカ合衆国のホワイトハウスとソビエト連邦のクレムリンとの間に、危機回避のために設けられた直通回線のことを指した。設置の目的は、二大超大国の首脳間で直接に意志疎通を図ることで、偶発的に戦争が発生しないようにという意図からであった。その後、各国首脳の間に設けられるようになった。
それ以前、キューバ危機当時の1962年、米国とソ連の通信は6時間かかった。通信の手順は以下の通りである。(なお真珠湾攻撃のとき、陸軍省・海軍省からホノルルへの連絡も同様の手順を踏まなければいけなかった。)
- 米国がソ連大使館と連絡
- ソ連大使館で、最高度の暗号を組む
- ウェスタン・ユニオン電報会社の配達員が、ソ連大使館に自転車で取りに来る
- 配達員が電報局に持ち帰る
- モスクワまでテレタイプで送付
- モスクワの電信局が外務省に配達
- 外務省で暗号電報を解読
- クレムリンに配達
第二次世界大戦中、フランクリン・ルーズベルト大統領とウィンストン・チャーチル首相が直接電話対談した例にならったものである。技術的にはスペクトル分割混合方式による音声通信であり、大西洋海底電線を使った。しかし、ドイツに盗聴されていたことが戦後判明した。
米ソホットラインについて確実と思われる資料により、設置後10年ほどの状況が分かっている。
- ホットラインは専用線であり、米ソホットラインは北欧経由と北大西洋の海底電線が使われた。予備回線が1本設けられたが、緊急時にはありとあらゆる回線が動員される予定であった。また、盗聴と偽通信を防ぐためにワンタイムパッドによる暗号化がされていた。
- 機械と暗号を準備したのは米国のNSAである。
- 音声ではなく、テレタイプによる文字通信（大文字と数字の）である。
- 実質的にはホワイトハウスとクレムリンのホットラインではあるが、技術的には米側の端末は国防省内にあり、専門の技術者と翻訳官が24時間365日待機しており、大統領の通信をどこでも確実に行うための専門の部署が国防省と大統領との通信を確保する。そのため大統領がどこに移動・旅行・避難しようと通信が維持される。理論上は国防省が通信内容を左右できるが、そのような可能性は考慮外であり、現在に至るまでそのような疑惑が持ち上がったこともない。
- 月に1回程度通信の状況を確認するための通信がかわされていた。
- 米側端末は2台あり（予備機の台数は不明）受信用のロシア語鍵盤のと、送信用の英語鍵盤である。お互いに自分の母国語で送信する。（日本語の達者なライシャワー駐日米大使が公式な場では絶対に日本語を使わなかったのと同じである）
- 大統領はホワイトハウス1階の執務室（オーバルオフィス）ではなく、地下の緊急対応室（シチュエーションルーム）で電話した。
米ソ間では、1967年の6月8日に中東の緊張が高まった際に初めて使用された。
転じて、一般的な緊急時の直通電話（特に、救急の通信指令室と病院の救急救命室を繋ぐ）や電話相談サービスの意味で用いられるようになった。
その他
- アメリカンフットボールにおける、クォーターバック(QB)とワイドレシーバー(WR)の名コンビを、パスが“確実に繋がる”事になぞらえてこう呼ぶ事がある。
- 『へびつかい座ホットライン』（ジョン・ヴァーリィ）