前立腺癌
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前立腺癌 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | C61. |
ICD-9 | 185 |
OMIM | 176807 |
DiseasesDB | 10780 |
MedlinePlus | 000380 |
eMedicine | radio/574 |
MeSH | D011471 |
前立腺癌(ぜんりつせんがん)は、前立腺(外腺)に発生する病気、癌の一つ。様々な組織型の悪性腫瘍が生じうるが、殆どは腺癌であり、通常は前立腺癌≒前立腺腺癌の意味で用いられる。日本では癌死亡者の約3.5%を占め、近年、急増傾向にある。ただし、癌の中では治癒率は比較的高い方であるとされている。45歳以下での罹患は家族性以外はまれで、50歳以降に発症する場合が多い。その割合は年を追うごとに増加する。[1]
欧米人では発生の高い癌で、男性死亡者の約20%でトップを占める。同一人種間の日本と海外での患者割合の差は、食生活の違いにあるとされる。食生活の欧米化によって罹患率は急増しており、近い将来男性癌死亡者の上位となることが予想されている。
目次 |
症状
外腺に多く発生する。初期は自覚症状がほとんどなく血液検査から前立腺特異抗原(PSA)高値によって、その存在が疑われる。進行すると、排尿困難等の症状を生じリンパ節や骨、実質臓器に転移する。転移性骨腫瘍のうち、前立腺癌のみ骨硬化性を示す。
原因
- 食事 :同一人種の居住地域による罹患率の差から食事が原因の一つと考えられている 高脂肪の食事は前立腺癌のリスクとなる。
- 人種 :黒人、白人、アジア人の順に頻度が高い
- 遺伝 :若年例では家族性の前立腺癌が存在する。また、血縁に前立腺癌がある場合、前立腺癌の罹患率が上がることが知られている。
- 感染 :レトロウイルスであるXMRVによる感染と前立腺癌との関連が研究されている。[2]
前立腺肥大症は前立腺癌のリスクとはならない。
予防
- 繊維成分(リコピン)を多く含んでいるものを取る。
検査と診断
病気の有無については、血液検査(PSA検査)によるスクリーニングを行い、問診、直腸診、エコー検査を行った上で癌が疑わしい場合には、針生検による病理組織診断でグリソンスコア等の評価が行われる。一般にはPSAが4.0ng/mlをカットオフ値とし、これ以上の場合、生検を行う場合が多いが、最適なカットオフ値は分かっていない。年齢別にPSAのカットオフ値を分ける場合もあり、施設によって値は異なる。一般に4ng/ml<PSA<10ng/mlでは前立腺癌の見つかる可能性は25-30%、10ng/ml以上で50-80%と言われている。
生検で癌細胞が見つかった場合には、造影CTによりリンパ節転移の有無、精嚢浸潤などの前立腺被膜外への癌浸潤が検査されるが、CTによる精嚢・被膜外浸潤、リンパ節転移の診断効果は低い。核医学検査である骨シンチグラフィーで骨転移の有無を評価する。また、T分類の精度を高めるため、MRIが行われることも少なくない。近年では、生検を行う前に磁力強度の高いMRI(3.0テスラMRI)や経直腸のMRIを用いることで画像診断が可能になってきている。また、カラードップラー検査を用いた経直腸超音波でも画像診断は可能となってきている。
分類
治療
治療については、男性ホルモン(アンドロゲン)の作用を減らす事によるホルモン療法、外科手術による除去、放射線療法、化学療法などがあり、状態によって最適な治療法がとられる。グリーソン分類などによる病理学的異型度が低く、血清中の前立腺特異抗原の値が低く、他の臓器への転移が認められない場合は、外科手術(根治的前立腺摘除術)もしくは放射線療法で根治することが期待できる。
高齢者や、転移のある場合(PSA値が高かったり病理検査での異型度が高かったりといった、転移の証明はできないものの転移が起こっている虞れが大きい場合を含む)は、ホルモン療法が選択され、エストロゲン製剤、アンドロゲン拮抗剤、LH-RH拮抗剤などが投与される。場合によっては精巣摘出手術が併用される。
前立腺癌の進行は比較的遅く、他の癌に比べると予後がよい。
この癌は「前立腺肥大症」という病気と症状が酷似しているため、早期発見が難しいと言われていたが、近年ではPSA(前立腺特異抗原)検診の普及などにより、早期に発見される症例がほとんどとなり、以前のように骨転移などをきっかけに発見される症例は激減した。
局所前立腺癌
局所進行前立腺癌
進行前立腺癌
再発性前立腺癌
関連項目
参考文献
- 『前立腺癌診療ガイドライン 2006年版』日本泌尿器科学会 (Minds医療情報サービス)
- 『有効性評価に基づ前立腺がん検診ガイドライン 2008年版』厚労省がん研究班編 (Minds医療情報サービス)
脚注
外部リンク